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人類の特徴(3) – 睡眠

睡眠

睡眠は、疲れをとるためであって、脳との関係はそれほどないのではないかと思われている方がおられるのではないでしょうか?

太陽の明・暗リズムと生存戦略

img007睡眠に触れる前に、太陽がつくる昼と夜についての話です。昼と夜が交互に来ることは、当たり前のことでそこに大きな秘密が生まれているとは気付いておられない方が多いのではないでしょうか?昼が来て、夜が来る、さらに昼が来るというリズムは地球誕生以来続いているのでしょうから、この意味では最も安定的なリズムです。生きものがこのリズムを利用しようとしても不思議ではありません。実は、植物、動物すべての生きものは、太陽の明・暗(昼・夜)のリズムに自身の生物時計(概日時計)を同調させるという生存戦略2-2-10をとっているのです。この戦略が、命の基本です。基本を守ることにより、地球上のあらゆる生命は今日まで命を伝え続けているのです。太陽と地球という環境が生命活動の源であることがよく分かります。

睡眠と脳

脳は、約5億年前に出現し※2-3-11、迅速な情報処理と機能調節を行う専用器官※2-2-10とされています。
睡眠は、人間を含む脊椎動物など脳を持つ動物に共通する特徴です。また、概日時計の下に働く脳による“脳のための管理技術” ※2-2-10とされていますので、睡眠は身体の外部環境と内部環境を結ぶコネクター役といえます。太陽の明・暗リズム⇔(睡眠)⇔脳⇔身体各器官、つまり睡眠は脳に向かって指揮棒をふり、脳と体のセルフメンテンスを進行させているのです。

因みに人間の睡眠は、高度な脳機能を持つがゆえに高度な睡眠です。

睡眠・覚醒リズム

人間の睡眠・覚醒リズムはそもそも25時間のサイクルなのですが、太陽の明・暗(昼・夜)のリズムに同調することにより24時間のサイクルにしているのです※2-2-10

睡眠中の脳の活動:発達・成長と修復を目的

睡眠中でも脳は休むことなく働いており、たとえば睡眠中に脳が指示を出し成長ホルモンが分泌されます。ことわざ「寝る子は育つ」は睡眠中の脳の働きを指しているともいえます。大人でも睡眠中に成長ホルモンは分泌され、修復(疲労回復など)の働きをしています。逆に、睡眠中に起こすと睡眠は中断されますので、成長ホルモンの分泌が止まり、子どもの場合は成長に悪影響、大人場合は心身の不調を招きます。

25時間サイクルを24時間サイクルに変える家族生活

家族ともに起床する、朝ごはんを食べるなどの家族全員の生活行動は、人類の生体時計が生来25時間リズムのところを24時間リズムに変換するための外部からの刺激入力とみなすことができます。朝起きるのが苦手な方も家族が起こしてくれるので24時間リズムで生活できている方もおられると思います。家族全員の生活活動は太陽の24時間リズムに安定的に同調するための仕掛け、人類が獲得した特徴の一つといってもよいのではないでしょうか?

再生・活動リズムが睡眠・覚醒をコントロール

img008ファミリー・ルネッサンスでは、家の中での睡眠、食事、談笑(会話)、生殖活動をあわせて再生(セルフメンテナンス)としています(図参照)。
睡眠-覚醒-睡眠-覚醒-・・・→ 医学
再生-活動-再生-活動-・・・→ ファミリー・ルネッサンス

このようにする理由は、一人ひとりの睡眠と覚醒は、家の中で、家族全員の生活行動としてコントロールされており、家庭・家族なしには継続的・安定的で質の高い睡眠も睡眠・覚醒リズムも得られないと考えるからです。

再生(セルフメンテナンス)

人類の祖先は、屋根と壁がある家に家族が集まって睡眠、食事、談笑(会話)、生殖活動を行うことを選択し、私たちに引き継がれています。家での生活、睡眠、食事、談笑(会話)は、明日の活動に備えるためとも位置づけられますので、再生(セルフメンテナンス)と呼びたいと思います。

再生(セルフメンテナンス);
・睡眠:脳に必要な物質の補給、調整、身体各器官への指令・補給
・食事:エネルギー・物質の補給
・顔を合わせ会話:五感への刺激入力、出力、再入力の繰り返し(共感・同情・理解)
・生活リズムの調整:睡眠・覚醒リズムの調整(朝の起床時間など)、朝ご飯・外出・帰宅時間の調整

※生きものの本質的な行動である生殖行動は、次の世代を生む行動ですので再生(メンテナンス)に他なりません。

注:
2-2-10 井上昌次郎「睡眠科学の基礎」日本睡眠学会ホームページ http://jssr.jp/kiso/kagaku/kagaku.htm
2-3-11 理化学研究所ホームページ http://www.brain.riken.go.jp/jp/aware/evolution.html